合成生物学といったら「俺」

どうも皆さん、一年ぶりですね。iGEM TokyoTechのばみやです。

最近めっきり冷えてきましたね。私は寒暖差があまり得意ではないので鼻水が止まりません。なんなら布団からも出られず、ラボのコアタイムをまあまあ無視してしまっています(現在間に合った率3%未満)。皆様もご自愛くださいませ。

時候の挨拶もほどほどに、本題に移りましょう。

突然ですが、皆様はどのようにしてこの記事を開くに至ったのでしょうか。質問を変えると、あなたのどのような属性が、この記事を開こうと思わせたのでしょうか。まあこれを読んでくださっている方々の大半がiGEMに参加しているプレイヤーの方々なのだろうし、あまり意味のない質問なのかもしれませんが、中には将来的にいずれかのiGEMチームに参加しようと考えている方や、新しくiGEMチームを作ろうとしている方といった、いわゆる未来のプレイヤーの方々もいらっしゃるのかなと淡い期待を抱いています。Japan communityの内輪でキャッキャッと楽しむのも一興ではありますが、アドベントカレンダーのように皆の目に触れるものはやっぱり外部の人へアプローチ出来たら幸せですよね。そんな方々にこそ届いてほしいものです。まあいずれにせよ、皆ざっくりと「iGEMや合成生物学に興味がある」といった属性をお持ちなのかなと思います。

合成生物学ね。Synbio。うんうん。いいですよね合成生物学。私も起きた時と寝る前に毎日欠かさず合成生物学してますし、最近ではおやつ代わりにお昼の合成生物学もしています。マイブームなんですよね合成生物学(もうしばらくお付き合いください)。

そんな合成生物学愛好家な私ですが、2か月ほど前に研究室配属の儀を済ませてきました。どれほどまでに合成生物学と関連のある研究室なのか。iGEMで培ってきたものが活かされる研究室なのか。期待に胸が膨らみますね。

その研究室の分野とは、ずばり動物行動学です。

あんまり長々と書くのもあれなので、さらっと紹介するに留めますが、脳科学的アプローチを用いてマウスの育児だったり他個体の救出だったりのメカニズムの解明を目指しています。

ん、

あれ?

おやおや……

今のところ合成生物学が見当たりませんね。いやいや、深く関連しているじゃないか、と憤っている聡明な諸君は私までご一報いただければ幸いです。よくわかりませんが、チームリーダーに「お前の配属先、東工大の研究室の中でiGEMと一番離れてない?」と目を見て言われ、「各々の配属先の研究室でiGEMの内容を取り込めないか」という話をしていた時に協力の意を示したらノータイムで「や、本当に結構です」という返事を頂いたという事実だけここに併記させていただきます。

まあ、はい。そうなんですね。私は現在、iGEMや合成生物学といったものと全く関係ないといっても過言ではない分野を専門に据えています。研究室の希望が通らずに行き着いた先がここだったというわけでもなく、100%私の希望でこうなりました。つまるところ、私の一番興味のある分野は合成生物学ではないんですね。なんならその近辺からもだいぶ離れている分野です。

いやお前、合成生物学に興味あってiGEMに入ったんじゃないのかと思われるかもしれませんが、私は東工大に生物系のサークルがほぼなかったので消去法的に選んだのが発端です。まあ数年も活動していればいずれ興味も出るでしょう……と思いながら2年半ほど携わってきましたが、如何せん熱が持てず、そのまま引退して今に至っています。私は基本的にEducationを担当していたのですが、根幹にある合成生物学の要素を牽引できる自信がなかったのかもしれません。

ここまで見返してみると、ハングリー精神を持って積極的にiGEMに取り組んでいる皆様にボコボコにされそうな内容ですね。まあ私の活動もこの記事の執筆で最後なので、何をしても怒られないのかなと。明日辞める○○って属性は基本的に最強ですからね。吐露せずにはいられなかったのでここに記しておきます。

ただ、ここまで個人的な内容をJapan communityのアドベントカレンダーに記すのはあまりにお門違いだなと思いますので、何かしらに昇華できるよう軌道修正しましょうか。

私は先月実施されたiGEMのJamboreeにオンサイトで参加しました。上記の理由からぶっちゃけ乗り気ではなかったのですが、まあついでに観光できるだろうし行くかぁ程度のノリで行くこととなりました。こんな舐め腐ったようなマインドなので得られるものもたかが知れているだろうと思っていましたが、存外様々な学びやモチベーションの起点が得られました。それらをここに記しますので、少しでも後続の方々の参考になれれば幸いです。

まず第一に痛感したのが、自身の英語力の無さです。

私は2日間ほど自身のブースにとどまり、貼ってあるポスターを見て興味を持ってくださった方々にプロジェクトの紹介をするという役割を担っていたのですが、まあこれがボロボロなわけです。自分の言いたいことを言うだけなら原稿を書いてそれを朗読すれば何とかなるのかもしれませんが、現実はそうはいかず、多種多様な質問が飛んでくるわけです(それはそうとして原稿くらい用意しとけよという話ではありますが)。その質問があまり聞き取れず何回も聞き返したり、説明しようにも上手く言葉が出てこなくてアーとかウーとか言いながらわちゃわちゃしたり……まあそれはそれは酷いもので、思い出しながらこれを書いている今も赤面しています。しかも説明が終わった後「英語力なくてごめんなさい……分かりにくかったよね」なんていうと、大抵みんな「大丈夫!理解できたよ!」なんて励ましてくれるわけです。少なくとも対等には見られてないわけですね。正直逃げ出したいくらいには恥をかきました。

少し時間をとって他のチームのブースで説明を聞いているときも、イマイチ聞き取れなくて理解に穴が出来てしまうといった様子でして。いずれのブースでもどこか釈然としない気持ちでいました。同年代のアジア圏のチームの学生は皆母語でもない英語を流暢に話し、積極的にディスカッションしているのに、英語が出来ないというだけでこうも蚊帳の外へ押しやられた気分になるのかと悶々としていました。ありがたいことに現代はDeepLなど便利な翻訳ツールが使える時代なので、英語力の重要性はさして高くないだろうと舐めた考えを持っていた私ですが、やはり実際に面と向かって会話することで生まれる信頼や安心感までは補えないなと強く感じることとなりました。

第二に、同年代の学生とのスキルの差を感じました。

前述のとおり、私はさほど合成生物学に熱量を注ぐことができませんでした。まあそれは半ば仕方のないことなのでいいのですが、では同年代のiGEMerが合成生物学に、iGEMに注いでいた熱量を、私は何に注いでいたのでしょうか。何かスキルを得ることができたのでしょうか。答えはノーです。研究室は成績順で配属の希望が通るので、記憶の限りだとそれに向けてシコシコ点数を稼いでた記憶はありますが、まあ何にもならない行いでしたし、それにリソースを割かれすぎて他には何もしてませんでした(これはせざるを得ないことではありましたが)。

私がみみっちく点数を稼いでいる間にライバル達は様々なスキルを身につけ、壇上で立派なプレゼンテーションを行い、深いプロジェクトへの理解の下で自身の成果を雄弁に語っているのです。これには英語力よりも強い喪失感を覚えました。自身の専門分野で研究を進めていればフラットな気持ちで臨めたのでしょうが、どうしても惨めさが頭を出してしまい、スキルを吸収する機会でもあるはずなのに上手く向き合うことできませんでした。

大まかに、以上二つが得られた学びです。学びというか、どちらかというと「あまりにも惨めなばみやさん列伝 in Paris」のような感じですが、私は一度地の底まで突き落とされ、地獄の淵までいかないと努力ができない愚か者なので、このように強烈な劣等感に苛まれるイベントが即ち学びになるのです。心身ともに健康に生きている皆様にはあまり真似してほしくありませんね。

座学で学習するという点で見ると、日本にいても英語なりプレゼンのやり方なりといったことは学べるので、もしかしたら私がiGEMでの学びとしているものは代替可能なものかもしれません。それでも行く価値はあったなと感じたのは、やはり世界中の同年代の学生がいかに活躍しているかを直接見るのはモチベーションの向上に直結するからです。前述のとおり、皆自分より遥かに立派なスキルを持っているスーパーマンなわけです。そんなスーパーマンたちから刺激を受け、なんなら交流することができるとなれば、何か感じざるを得ないわけです。オンサイトで参加することの大きなメリットは、現地であった人々と仲良くなれるという点だと思います。英語力が拙くても、積極的に話しかけさえすれば「魂」で通じ合えますよ。きっと。私はなけなしのコミュ力を振り絞り、色んなチームの方々とツーショットを撮って回りました。「英語ができないアジア人の写真コンテスト」でもあったのかってくらい皆快く写真を撮ってくださいました。その写真は思い出でもあり黒歴史なので、臥薪嘗胆の語源のように、その写真をたまに見返しては勉強に精を出すこととしましょう。

本年度は、Japan-UnitedがGrand Prizeを獲得するというとんでもない快挙を成し遂げました。Jamboree後に同チームのリーダーである大竹さんの書いた記事を読んで、あまりの凄さに椅子から転げ落ちたのは記憶に新しいです(まだ読まれていない方は是非)。こんな立派な高校生がいるなら、日本の合成生物学の未来は明るいなと思いました。探せば他にもiGEMerの活躍の様子や、そんな方々のインタビュー、モノローグはいくつか出てくるでしょう。皆明確な目標と高い志を持ち、iGEMに取り組んでいた様子が伺えます。

ただ、そんなに明確なビジョンがなくても、例えばたまたま入った大学にiGEMのチームがあって、ちょっと面白そうだから入ってみるなんて緩い理由もありなんじゃない?と私は思っています。少しでも興味があったら多分入って損はないんじゃないかなっていう、最終的にはそんな提案なのでした。ふらっと、気まぐれで入ってみたら思いのほか面白いかもしれません。チームメイトに恵まれ、良い友達になれるかもしれません。最後まで興味が持てなくても、道草の途中に思いがけない学びがあるかもしれません。ここではあまり触れていませんでしたが、iGEMで知り合った同期や先輩後輩の諸君は本当に信頼していますし、心から感謝しています。彼らと出会うために入り、その居場所を失いたくないからしがみついていたといっても過言ではありません。こんなことは別にどんな課外活動にも言えることではありますがね。iGEMは気になってはいるけどいかんせんハードルが高そう……とは感じてほしくないのです。だいぶこっぱずかしい文言を吐きましたが、まあ最後ですしね。

そんな妄言が、iGEMドロップアウト組からのなけなしの言葉でした。誰かに伝えるためってより、自分に言い聞かせているのかもしれません。仕方ないね。

長々と失礼しました。ここまで読んでいただきありがとうございます。そろそろ失礼いたします。数日後の記事も担当しておりますので、もしよろしければそちらもご覧いただけたらと思います。

それでは。

グッドバイ。